むずむず脚症候群(むずむずあししょうこうぐん、英: restless legs syndrome、RLS)は、身体末端の不快感や痛みによって特徴づけられた慢性的な病態である。レストレスレッグス症候群(-しょうこうぐん)、下肢静止不能症候群(かしせいしふのうしょうこうぐん)ともいう。
むずむず脚症候群は、ヨーロッパでは17世紀からこれに相当する病気の報告があり、1960年になり米国のエクボン博士により同博士の名前を取って、エクボン症候群(英: Ekbom syndrome)と初めて名前が付けられた。日本では1997年に日本睡眠学会に米国より現状調査の依頼があり、日本国内で俄かに注目されるようになった。現在では広く見られる神経疾患となり、患者が脚を動かさずにはいられない状況から、「下肢静止不能症候群」とも呼ばれる。この項では、以下RLSと記載する。
[編集] 症状と特徴
自覚症状として、じっとした姿勢や横になったりしていると主に下肢の部分に(患者によっては、脚のみならず腰から背中やまた腕や手など全身にまで現れる)「むずむずする」・「じっとしていられない」・「痒い」だけでなく、「ピンでなぞられているような」・「針で刺すような」・「火照るような」・「蟻やミミズなどの虫が這っているような」などの異様な感覚が現われ時には「振動」のような感覚まで感じたりする場合もある。また「激しい痛み」を感じるなどさまざま。この苦しさは「脚の中に手を突っ込んでかき回したいぐらい苦しい」と表現する患者もいて、この症状の辛さを表している。
このむずむずとした不快感や痛みなどの不快な異常感覚・身体症状が下肢や腰・背中・腕などに出現するため、患者はこれを抑えるため常に脚を動かしたり身体をさすらなければならない状況に追い立てられる。
3分の1の患者では週に2回以上、中等症から重症の症状が起こる。特に夕方から夜間にかけて症状が増強するという特徴(勿論、日中でも症状が出現)があり入眠障害・熟睡障害や中途覚醒のような睡眠障害の要因となり、また日常の座ったままやじっとした姿勢の活動を阻害されるため放置していると日常生活に大きな影響を及ぼす。この結果、副次的症状として昼間の疲労感を引き起こす。
排尿時の唇や痛みをカット
実際、患者は昼夜にわたり生活の質(QOL)に悪影響を及ぼす様々な症状に苛まれている。回復が長引けば全身の「慢性疼痛」の症状がでてくる。
症状が悪化すると睡眠障害と過度のストレスから「うつ病」を招き、最悪の場合、自殺する人もいる恐ろしい病気である。漫然とドクターショッピングとならぬように、睡眠障害を専門とする精神科医や神経内科医の診断を受けなければならない。
正確な原因は不明だが、これまでの研究は
- 神経伝達物質であるドーパミンの機能低下
- 中枢神経における鉄分の不足による代謝の異常
- 脊髄や末梢神経の異常
- 遺伝的な要素
などが考えられている。脳内での鉄分の欠乏や、ドーパミンの合成異常がかかわっているという仮説が有力である。つまり、人間の神経で情報の受け渡しを行うドーパミンという神経伝達物質は鉄分が不足すると分泌量が減り、情報を正しく伝えることができなくなってしまいすべて脳への情報が誤って伝えられる為、身体の感覚に異常を感じるとされている。また鉄欠乏性貧血は女性に多いので、RLSが女性に多い事に関係しているともいわれる。
どういう場合に発症するのかも未だ明確にはなっていない。しかし、こんな場合に出やすいというのは以下に列挙する。なお、精神的ストレスは病状の強弱と関連あり。
股関節骨折の症状
[編集] 日常のケア
- 日常のケア治療
- カフェイン・アルコール・過度の喫煙など嗜好品を避ける。
- 日常生活で誘発因子になるカフェインやアルコール、過度の喫煙を避けることが第一。
- 睡眠を浅くする可能性があるカフェインを含む飲料を控える事。飲酒は入眠を誘導するがアルコールが分解される過程で喉が渇き交感神経が刺激され、却って睡眠が浅くなるので、飲酒を控えることも効果があるとされている。
- 休薬
- 脚のマッサージ
- 就寝前に脚をストレッチやマッサージを行い、筋肉のこわばりを取ると改善されることもある。
- 股関節のストレッチを意識しながらラジオ体操を行うと改善されることもある。
- 立っている時、足の小指の先が地面につくようにする。
- 日常のケアで改善されない場合
- 基本的にドーパミン機能の促進剤、あるいは抗てんかん薬の一種のクロナゼパムをごく少量使用(治療薬の節参照)。
- 針灸・漢方薬による治療にて新陳代謝を促し、ドーパミン等の脳内ホルモンの分泌を正常化しRLSの症状が軽減され改善していくこともある。信頼のおける漢方医・鍼灸師に相談してみること。
- 一部のサプリメントや一部のハーブも効果がある可能性があるが、まだ確証は得られていない。
- 問題点
この疾患の一番の問題点は身体所見・検査に異常が認められず、RLSと診断できずに、無駄な投薬治療と時間を費やすことがあることである。ドクターショッピングすることも、まれではない。発症の項目で記載したように抗うつ薬や抗精神病薬を投与することにより、却ってRLSの症状が悪化することが多い。早くRLSの専門医に相談することが望まれる[3]。
また、鉄欠乏性貧血において自己診断での鉄剤の服用は避けること。鉄欠乏状態でない場合は鉄剤の服用は副作用がある。
ポストにきびマークの傷跡の治療薬
[編集] 治療薬
RLSの異常感覚は、薬物治療で軽快する場合が多い。とりわけドーパミン神経の機能を高める薬である「L-DOPA製剤」や「ドーパミン受容体刺激薬」がRLSによい効果があることは、これまでの研究や臨床経験から知られている。また抗けいれん薬(クロナゼパム・バルプロ酸など)も効果が見られる。RLSを疑わせる症状があり、更に血中フェリチン濃度が50ng/mL以下の時には、鉄剤の処方により症状が改善することが多い。但し、個人差があり血中フェリチン濃度が50ng/mL以下が画一的に異常値とはならないため、入眠状況の観察や問診も重要である。
この疾患に睡眠導入剤(サイレース)や抗うつ薬を処方されると、むずむず感が解消されないまま眠気だけがどんどん増し却ってRLSの症状を悪化させる可能性がある。
欧米では中等度以上の症例には、パーキンソン病の治療にも使われるドーパミン受容体作動薬を第一に使う[4]。国内では、2010年1月、「ビ・シフロール」のRLSへの保険適用が承認された[5]。
[編集] 推定患者数
- 欧米での患者数は、1200万人といわれている。
- 日本国内の患者数は、推定で人口の3~4%
- 40歳以上の中高年、特に女性に多い(男女比2:3)
- 症状が進むと、不安や抑うつなどの精神障害を合併することがある
- RLSという疾病に対する認知度の低さからもっと多くの患者が潜在しているとも考えられ、この顕在・潜在患者を含めると約500万人近く存在するとも推測される。
- 不眠症患者の10人に1人の割合で、RLSの人がいるといわれている。
[編集] 社会的認知度
マスコミが報道しないと一般の人の間ではRLSがあまり知られていないため、ひどい不眠に長年苦しんでいる患者がおり、適切な治療を受けていないケースが殆どであり多くのひとが治療を受けていないといわれている。これは20年前の時点で睡眠時無呼吸症候群を知っている人は殆どいなかった。現在RLSが置かれている状況はまさに20年前の睡眠時無呼吸症候群と同じ状況である。
しかし、日本の医師の間では非常に有名な疾患であった。海外では米国のエクボン症候群の名前が用いられるが、そもそもこの疾患は日本睡眠学会を中心に周期性四肢運動障害及び前駆症状として、大阪大学の杉田義郎教授らが研究を続けてきた症候群だからである。日本睡眠学会の会員が多いことも医師の間でこの疾患が有名な一因であろう。ただし、「むずむず脚症候群」はもともとはマスコミ用語で、かつては周期性四肢運動障害前駆症状群とよばれ、少し前までは医師の間ではレストレス・レッグス症候群と呼ばれていた疾患である。
RLSは入眠障害や中途覚醒といった睡眠障害の要因となっており、これがきっかけで患者が受診し診断と治療を受けるのが一般的である。RLSは入眠障害の要因とだけなっているだけでなく患者は昼夜にわたり生活の質(QOL)に悪影響を及ぼす様々な症状を起こす可能性がある。
睡眠障害を主訴とする患者がまず受診するのは内科、精神科、心療内科などであるが、これらの医師の間でも依然としてRLSの認知度が決して充分とへ言えないため、RLSが見逃され、ドクターショッピングにつながることがある。
症状自体は名称から脚だけと思われがちだが病気の本体は下肢ではなく、中枢神経系にあると考えられている。従って、人によっては下肢だけではなく腰から背中や腕や手など全身にまでむずむずした不快な症状を感じる人も少なくないので全身に症状がある患者の場合、脚だけはないのでRLSではないと判断するのは早計である。
この病気は人工透析患者、妊婦、鉄欠乏性貧血の若い女性にも多く夜に眠れない。夜に眠れないと 交感神経が刺激されるリスクがある。もし交感神経が刺激されると、基礎代謝が上昇しやせる。妊婦の場合、放置すると精神的にも不安定になり母体や胎児に悪影響を与える」と言われている。
- ^ 不眠 (PDF)日本メディカルセンター
- ^ 渋井 佳代 ,女性の睡眠とホルモンバイオメカニズム学会誌, Vol. 29, No. 4, pp.205-209, (2005)
- ^ 症状が長引いている患者の場合、主治医がRLSを全く認識していない可能性が高い。
- ^ パーキンソン病治療薬「プラミペキソール」(ビ・シフロール)のRLSへの適用は、欧州(EU)では2006年4月に中等症から重症のRLSを適応症として効能追加の承認を受け更に米国(食品医薬品局(FDA))では、2006年11月10日に軽症から中等症のRLSの追加適応承認を受けた。一方、日本国内ではこの薬はあまり用いられていない。しかし、パーキンソン病の一部として適用を受けている。RLSへの保険適用も、2010年1月に承認された。
- ^ 朝日新聞2010年4月29日生活欄の記事。
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